トピックス

Topics

  • 法律コラム

NDA(秘密保持契約書)の作り方と「ひな形使い回し」の落とし穴

弁護士と聞くと「難しい言葉を使われそう」「怖い」「料金がわからない」といったイメージを持たれる方もいらっしゃるのではないでしょうか。
私は、そのような弁護士の悪いイメージを払拭し、気軽に相談できて安心できる存在でありたいと考えています。

今回は、中小企業や零細企業の経営者様、管理職、法務担当者様に向けて、「NDA(秘密保持契約書)」についてお話しします。
細かな理論には深入りせず、明日からの実務にすぐ役立つ実践的な知識を分かりやすくお伝えします。

✅ オンラインで無料法務セミナーを開催中です。

ひな形の使い回しは危険!NDA(秘密保持契約書)が現代ビジネスで必須となる本当の理由

近年はメール送信のほか、クラウド共有やメッセンジャーアプリなどにより、データ共有が簡単になっています。
その分、業務上の秘密情報を間違った相手に送信したり、ネット上に晒されたりすると一瞬で広がり、取り戻すのが困難な時代です。
そのため、情報の取り扱いに注意を促すためにNDAを提示する企業が増えています。

なぜ企業にとってNDAが重要なのか

皆さんの会社では、以前使ったNDAのひな形をそのまま使い回していませんか?ひな形の内容を理解せずに使い回すと、次のようなトラブルの原因になります。

管理が難しくなる

秘密情報の範囲が広すぎると、受け取った側が何をどう管理すべきか分からず、結果的に情報漏洩の危険性が上がってしまいます。
逆に、秘密情報を、事前に指定した情報に限って扱うこととした場合、特に渡す側の立場では、伝え忘れるリスクが懸念されます。

今回の取引は、受け取る秘密、渡す秘密のいずれが多いのか、その情報に重要なものが含まれる可能性はどうか、具体的に考えておく必要があります。

業務上の制約リスク

守秘義務の期間が長すぎると、契約終了後も情報をずっと保持し続けなければならず、管理の負担が大きくなります。

「不正競争防止法があるから安心」は勘違い!法律とNDA(秘密保持契約書)の決定的な違い

情報漏洩については「不正競争防止法」「個人情報保護法」といった法律による規制も存在します。しかし、企業で働く現場の従業員全員が、これらの専門的な法律に精通しているわけではありません。

関連する法律との関係

「この情報を守ってほしい」という企業間のルールを明確に伝え、トラブルを未然に防ぐための「注意書きやルールブック」として、法律を補完する形でNDAが必要になるのです。

【図解・場面別】NDA(秘密保持契約書)の締結が必須となる3つの取引ケース

NDAは、本格的な契約に入る前の準備段階で使われます。

NDAが活用される主な場面

企業間の情報交換(対等な関係)

お互いのノウハウや強みを出し合い、共同で製品を作る前の事前協議などで使われます。

業務の委託・受託(上下の関係)

システム開発や広告制作などで、頼む側(クライアント)が頼まれる側(代理店など)へ情報を提供する際に使われます。クライアント側からのみ情報を出す場合は、片方向だけのNDA(誓約書形式)を結ぶこともあります。

M&Aや事業譲渡

基本的には買い手側が売り手側の情報を見るため、買い手から売り手へ一方的なNDAを差し入れます。
ただし、合併のようにお互いの情報を開示し合う場合は、双方向のNDAが使われることもあります。

情報漏洩を未然に防ぐ!自社の秘密情報を相手に渡す際の「3つの重要チェックポイント」

大事な情報を相手に渡す際、契約書で以下の点を確認しましょう。

特に注意すべきポイント

業務の再委託の可否

ウェブ制作などでフリーランスや外部業者へ再委託される場合、そこから情報が漏れないよう、再委託先にも同等のNDAを結ばせているかチェックしましょう。

秘密情報の特定

あらかじめ「これが秘密情報です」と示しておくことで、相手の注意を引きやすくなります。

契約不成立時の返還・破棄義務

M&Aなどで交渉が破談になった後、相手が似たビジネスを始めたり、従業員を引き抜いたりするのを防ぐため、情報の返還・破棄のルールは必須です。市場価値の高い情報、秘匿性の高い情報は後回しにするなど、段階的に情報を出す工夫も有効です。

【プロが教える】NDAテンプレートを自社向けに最適化する5つの条項修正テクニック

テンプレートをそのまま使うのではなく、取引に合わせて微調整することが大切です。

守秘義務を負う主体の確認

お互いに情報を出すなら「双方向型」、製造委託のように一方が設計図を渡すだけなら「片方向型」が合理的です。

秘密情報の定義

指定したものだけを秘密とする「限定型」と、渡すものすべてを秘密とする「非限定型」があります。顧客リストやレシピなど、特に守ってほしいものは具体的に例示しておくのがおすすめです。

第三者提供の範囲

社内(役員・従業員)に留めるのが基本ですが、業務上必要な場合は、親会社・関連会社や、弁護士・税理士などの専門家、再委託先を含めるよう修正します。

契約期間

情報の開示から3〜5年程度とするのが一般的です。不当に長すぎると受領側の負担になります。

損害賠償

万が一漏洩した場合、損害の幅が広すぎて金額の算定が難しく、また漏洩ルートの特定(立証)も困難なため、損害賠償条項があっても実際にはあまり役に立たないことが多いのが実情です。
それでも、できるだけ漏えいを事前に阻止したい場合には、賠償範囲や上限などに限定を付けず、賠償責任を負わせる条項にする必要があります。

契約締結後が本番!情報漏洩を防ぐ「社内体制づくり」と「外部委託先の管理方法」

契約書にサインしたからといって、自動的に情報が守られるわけではありません。漏洩を未然に防ぐ「事前予防」が何よりも大切です。

NDAは締結して終わりではない

現場担当者への周知徹底

SNSへの映り込み禁止など、ルールを直接伝えて教育する機会を設けましょう。

外部ツールの管理

クラウドで共有する際は、アクセスできる人を限定し、パスワードをかけ、誰が使ったか記録が残る仕組みを作りましょう。

再委託先の管理

フリーランスや個人事業者一人ひとりにも、きちんと守秘義務の契約を結びましょう。
これらの取り組みは、自社内はもちろん、取引相手方に対しても、適切な対応をしているのか、常に問いかけ、確認する姿勢が大切です。

【弁護士が回答】NDA違反の損害賠償は難しい?秘密保持契約に関するよくあるQ&A

Q. 取引相手がNDAに違反して情報を漏らした「らしい」のですが、損害賠償できますか?

A. 「〜らしい」という伝聞では証拠にならず、誰が漏らしたかの特定は極めて困難です。
また、裁判ではその情報が「秘密として管理されていたか」「有用か」「公に知られていないか」といった厳しい要件をクリアする必要があります。勝てたとしても損害額の立証も難しいため、賠償のハードルは非常に高いと言えます。

Q. NDAがあっても漏えいした場合には十分な賠償が受けられないこともあるようです。結局、NDAを結ぶ意味ってあるんですか?

A. はい、実務上は使うべきです。
NDAがあることで「違反すれば賠償になる」という注意喚起・抑止効果が働き、うっかり漏洩を減らせます。また、万が一、情報漏えいがあって裁判になった際、大前提としてどのようなNDAを交わしたのかは前提論点になります。「NDAすら巻いていない取引で漏えいした情報が、本当に重要な秘密だったのか?」と見なされてしまうこともありえます。
NDAだけでは十分な漏えい対策ではありませんが、事前準備としては、必須の取り組みと言えます。

いかがでしたでしょうか。NDAは情報漏洩リスクを減らすための第一歩です。当事務所では、X(旧Twitter)やYouTube、Instagramなどでも積極的に情報発信を行っていく準備をしておりますので、ぜひフォローをお願いいたします。

また、アンケートにお答えいただいた方には、本日のレジュメや契約書のWordデータ、チェックリストなどの特典をご提供しておりますので、ぜひご活用ください。
何かお困りのことがあれば、いつでもお気軽にご相談くださいね。

無料ウェビナーのご案内

TMG法律事務所は、中小規模の企業で起こりやすい問題やその対処、回避方法を的確にお伝えするセミナーを開催しています。
まずは無料セミナーにご参加ください。中長期的に、経営者・管理職のあなたを力強く支える弁護士がここにいます。

【実務直結】弁護士による企業法務ウェビナー(無料・アーカイブあり)