【中小企業向け】もう怖くない!契約書のリーガルチェック術〜自社で見るべきポイント〜
こんにちは。TMG法律事務所で代表弁護士をしております吉田浩司です。大阪で弁護士登録をして20年目になります。
「弁護士ってなんだか難しそう…」「相談するといくら取られるか分からなくて怖い」といったイメージをお持ちの方もいらっしゃるのではないでしょうか。私は、そんな弁護士の悪いイメージを払拭し、気軽に相談できて安心できる存在でありたいと考えています。
今回は、中小企業および零細企業の経営者や中間管理職の皆様に向けて、「契約書のリーガルチェック」について実践的な知識をお伝えします。
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1. 契約トラブルを未然に防ぐ!リーガルチェックの「本当の目的」と2つの役割
リーガルチェックと聞くと「契約書の違法なところや無効な条項を見つけて修正すること」をイメージされるかもしれません。もちろんそれは非常に重要ですが、実はそれだけではありません。
私が長年、年間150通から200通以上の契約書を見てきた経験から言うと、明らかに違法で無効な条項というのは意外と少ないのが実情です。
契約書には、大きく分けて2つの重要な役割があります。
リーガルチェックの本当の目的

裁判規範としての役割
契約条項は、万が一大きなトラブルになり、裁判で解決しなければならなくなった際の「解決基準」として役立ちます。自社に不利に作用しないよう、有利に進められるように権利や義務を明瞭に記載しておきます。
行為規範としての役割
契約条項は、日頃の業務の中で「お互いが何をしてはいけないのか」「何をするべきなのか」というルールとして役立ちます。互いに契約条項に従って行動することで、トラブルを未然に防ぐのです。
法律の専門的な表現ばかりで担当者が理解できないまま契約が進むと、ルールが守られずトラブルになるリスクが高まります。そのため、より良いリーガルチェックとは、トラブルを事前に予防し、お互いにとって分かりやすい契約書を作ることだと考えます。
よりよいリーガルチェックの視点

また、リーガルチェックに「唯一の正解」はありません。
売主/買主など、立場によってチェックする対象は異なりますし、その取引の重要度、条件の重要性(絶対に譲れないか、相手に合わせてもよいか)によっても修正の対象や内容、要求姿勢は変わります。
だからこそ、弁護士と会社担当者の意思疎通が非常に重要になります。
2. 弁護士への丸投げは危険?現場担当者と弁護士の正しい「役割分担」
リーガルチェックと言っても、弁護士がすべてを完璧にチェックできるわけではありません。実は、現場を担当する社員の方にしか見つけられない間違いも多いのです。
レスポンスを早くし、的確なチェックを行うための「役割分担」のポイントをお伝えします。
会社担当者が必ずチェックすべきポイント

契約金額や対象物
非常に多い間違い:過去の契約書を使い回して金額や対象物(品番や数量など)、当事者の名前が間違っているケース。
現場の動きとのズレ
契約書ひな形に「有資格者を常駐させる」「定期的な報告をする」などと書書かれた条項は必ず内容を確認してください。
実際にはその予定がないのに契約を締結すると、後から契約違反(債務不履行)を指摘される危険があります。
業務内容の過不足
自社にとっておなじみの業務委託でも、初めての取引相手では、業務の内容が正確に伝わっているのかはわかりません。契約書には具体的に書かれていない場合、どこまでが業務の範囲なのか(点検だけか、補修も含むのか等)、ズレがないかを現場で確認してください。
弁護士に確認・相談すべきポイント
一方で、以下のような法的な判断や複雑な条項の作成は、弁護士にお任せいただくのが安心です。
自社の懸案事項は契約条項で反映されているか

複雑な条件の条項化
例えば、広告代理業務で、成果報酬を設定する場合に、「〇〇人以上登録されたら報酬が変わり、3ヶ月間持続する」といった条件を設定する場合があります。
このような場合、
- どの時点で登録者をカウントするのか
- いつから報酬が変わるのか
- 期間中に登録者が減ったらどうするのか
など、詳細を決めておかないと、いざ条件が達成した際に現場が混乱することが想定されます。
有効に運用するためには現場と弁護士の連携が必要になります。
免責事項の確認
「広告のコンバージョンは必ずしも売上を約束するものではない」「了承を得て出稿した広告が炎上」「提供を受けた素材で作成した媒体に対し、他社から違法を指摘された」など、クライアントとのトラブルが生じた場合に、自社を守るための免責を用意しておく必要があります。
このような条項は、あまりにも一方都合だと合意してもらえなかったり、一部が無効になるリスクもあります。
免責事項がが正しく機能するかどうかの確認は、弁護士によるチェックが必要です。
矛盾の発見
例えば「検品後は返品を受け付けない」としながら、別の条項で「無制限に契約不適合責任(欠陥品の補修・交換など)を認める」といった、互いを打ち消し合うような矛盾した条項がないかのチェックです。
知的財産権の取り扱い
著作権や商標権など、専門的な知識が必要な分野の扱いについては、契約実務においてはある程度定まった言い回しや取り決めが有効です。
3. 契約書チェックの弁護士費用相場|スポット依頼と顧問契約の違い
「弁護士に頼むといくらかかるか分からない」という不安にお答えするため、当事務所の費用の目安をお伝えします(※事務所や案件によって異なりますので、あくまでご参考としてお考えください)。
リーガルチェックの費用と時間

スポット依頼(単発での作成・改定)
業務の性質上、めったに新規の契約書を扱わない企業の場合、単発での契約書作成、チェックをご依頼されることがあります。
当事務所の場合、A4サイズ2枚程度の一般的な契約書であれば、最低額は30,000円、高くても100,000円を超えることはほぼありません。
顧問契約での依頼
年間数通~10数通の契約書チェックや修正・作成が必要な企業の場合には、顧問契約をおすすめしています。月額50,000円からの顧問料の範囲内で、月に数通の契約書チェックや、月に1種類程度の新しい契約書作成を追加料金なしで対応できるケースが多いです。
4. 契約書チェックにAIは使える?弁護士が指摘する弱点と活用法
最近話題の生成AIを使って、契約書のリーガルチェックをされている方も増えています。
結論から言うと、AIは「誤字脱字」や「表記ゆれ(甲乙の記載ミスなど)」の発見には非常に優秀で、かなり役に立ちます。また、一般的な民法や商法に基づく利点・不利点の指摘もしてくれます。
しかし、AIには以下のような弱点もあります。
「いい塩梅」の調整が苦手
AIは自社に100%有利な修正案を提案しがちなため、そのまま相手に突きつけると契約自体が破談になる恐れがあります。相手との力関係やニーズに合わせた細やかな調整は、まだ弁護士の得意領域です。
行間を読めない
「実際の取引はこうなんだけど…」といった背景事情はこちらから細かく指示しないとAIは気づけません。AIは同種取引の標準的な条項を示す傾向にありますが、その会社独自のやり方、特徴を知りません。
顧問弁護士のように「この取引なら、貴社の場合こういうことも問題になりませんか?」と気を回して聞くことはできません。
独特な言い回し
修正文が公用文や裁判実務に応じた自然な表現になっておらず、いわゆる「AIくさい契約書」になってしまうことがあります。
現状の企業法務では、AIを補足的に使用しつつ、最終的な「さじ加減」や経営判断に関わる部分は弁護士と相談しながら進めるのがベストです。
5. 法律違反=全部拒絶ではない?リスクを天秤にかける「経営判断」の重要性
例えば、企業のテナント契約(賃貸借)において、貸主側から解約予告が「3ヶ月前」と書かれた契約書を受け取ったとします。
そもそも、借地借家法によって、貸主からの解約には6ヶ月の猶予が必要であるうえ、正当事由が無ければ自由に解約できません。貸主側の契約書には、法律上無効となる箇所があります。
このように、法律上無効な条項があった場合「すべて直してください」と要求して契約が破談になるリスクをとるのか、それとも「最終的には法律が守ってくれるし、短期間の利用だから」と割り切って契約を進めるのかは、経営者としての判断になります。
私たち弁護士は「ここは法律上無効ですよ」「こう変えられますよ」という判断材料はご提供できますが、最終的にどうするかは皆様のビジネスの状況次第です。また、対象業務について、実務に精通した弁護士の場合には、どの程度のリスクあるいは相手方の拒絶が想定されるのかをアドバイスできることもあります。
「自社は何をしようとしていて、どんなトラブルを避けたいのか」を理解してくれる弁護士と、二人三脚で進めていくことをおすすめします。
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