問題社員を解雇できない?リスクを回避する「退職勧奨」の正しい進め方
こんにちは。TMG法律事務所の弁護士、吉田浩司です。
弁護士に対して「難しい・怖い・料金がわからない」というイメージをお持ちの方もいらっしゃるかもしれません。私はそうした悪いイメージを払拭し、皆様にとって気軽に相談できて安心できる身近なパートナーでありたいと考えています。
本日は、中小企業や零細企業の経営者・管理職の皆様に向けて、近年ご相談が非常に増えている「問題社員への対応」について、明日からの現場で役立つ具体的な行動指針をお伝えします。
細かな理論は極力避け、実践的な内容に絞って解説いたします。
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1. なぜ問題社員の「解雇」は難しいのか?法律上の高いハードル
勤務態度が不良、業務上のミスが多い、何度指導しても反発してくる…このような問題社員に対して「すぐに辞めてもらいたい」と考える経営者の方は多いのではないでしょうか。
しかし、現在の日本では、従業員を解雇することは非常にハードルが高くなっています。
解雇を巡る現状

- 労働契約法第16条により「解雇は客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして無効とする」と規定されています(解雇権濫用法理)。
- そのため、裁判において、会社側は解雇の合理性、社会的相当性を認めてもらうため、重い立証責任を負っています。
- 従業員に能力不足や少々の勤務態度不良があっても、解雇は認められず、横領などの業務に関わる重大な犯罪行為や、14日以上の長期無断欠勤など、よほどの理由がない限り解雇は通用しません。
不当解雇で訴えられる?企業が抱えるリスクとコスト
近年はSNS等のメディアを通じて労働法に関する知識が広まり、労働者が弁護士や労働組合に相談して会社を訴えるリスクが格段に増えています。
もし解雇をめぐって争いになった場合、企業には以下のような重い負担がのしかかります。
- 弁護士費用がかかるうえ、和解で解決する場合でも給料の1ヶ月〜6ヶ月分以上の解決金を支払う支出が見込まれます。
- 裁判で解雇が無効になった場合、解雇してから無効になるまでの期間(例えば3年間)の賃金を全額遡って支払う義務(バックペイ)が生じます。
- 解雇が無効となるため、労働契約は継続しており、その問題社員が会社に戻ってくることになります。
- 裁判対応のために、会社の担当者は聞き取りや資料作成に多大な時間と労力を奪われます。
2. 解雇トラブルを防ぐ!企業が事前に踏むべき4つの指導ステップ
解雇には多大なコストとリスクが伴うため、最終手段として位置づける必要があります。
まずは以下のステップを踏み、問題解決を図ることが重要です。
教育と指導の徹底
仕事のやり方を教え、ミスをした場合は何が問題かを具体的に指示し、コミュニケーションを繰り返します。
記録の保存
指示内容は業務用のチャットツールや日報などを用いて、必ず記録に残します。
指導書の交付
指導に従わない場合、いつ・どこで・どのような行動がダメなのかを客観的な事実に基づいて記載した「指導書」を渡し、説明します。
配置転換
指導を重ねても改善しない場合、別の支店に移したり、別の業務を担当させたりする配転命令を検討します。
これらの対応を根気強く続けることで、会社の指導に嫌気がさした本人が自主退職する場合があります。このような場合、解雇リスクを負うことなく、問題社員対応が解決します。
もし、本人が会社の指導に応えて、能力向上、勤務態度に改善が見られれば、想定外かもしれませんが、それは良い結果と評価できます。
どの業界も人手不足ですので、戦力となるべき社員が会社に残ってもらえるのは喜ばしいことです。
3. 問題社員に辞めてもらう有効手段「退職勧奨」とは?
協調性がなく、独自ルールで動き、取引先を怒らせてしまうような社員に対しても「協調性がない」「態度が悪い」だけでは解雇は困難です。
そうした社員に辞めてもらう手段として「退職勧奨」があります。
退職勧奨とは、会社から「会社を辞めませんか?」と提案し、労働者がそれに合意することで労働契約を終了させる手続きです。
解雇リスクを回避できる退職勧奨のメリット
- 解雇理由の有無に関わらず、双方が合意すれば退職を成立させることができます。
- 「解雇」という重い処分を避けることで、労働者の自尊心を過度に傷つけず、ソフトな解決が可能です。
- 合意の上での退職となるため、労働者が、労働基準監督署や裁判所に駆け込む危険や、ネットへの悪質な書き込みをするなどのトラブルを減らすことができます。
- このように、退職勧奨は、労働者と使用者、双方にとってメリットのある解決方法といえます。
慰謝料請求を防ぐ!退職勧奨の注意点と「強要」にならない境界線
- 強制力はないため、労働者が拒否すれば退職勧奨は成功しません。
- 退職の理由や条件を穏便に説明し、労働者に納得してもらうための対話力と交渉力が使用者側に求められます。
- 結果を急いで強引に合意書に判を押させると、後で「脅迫された」として合意が無効になったり、慰謝料を請求されたりするリスクがあります。
4. プロが教える!退職勧奨を成功に導く4つの実践フロー
退職勧奨をスムーズに進めるためには、事前の準備が不可欠です。
① 納得を引き出す「退職理由」の選定と正しい伝え方

退職理由の選定と伝達方法
- なぜ辞めてほしいのか、評価の元になった行動など、根本的な理由を率直に伝えます。
- 横領など解雇に近い重大な理由がある場合は、証拠を示して厳しく伝える必要があります。
- 「解雇」だと誤解されないよう「これは退職勧奨であり強制ではない」と明確に伝えることが重要です。
- 応じない場合は、他の部署や職種への異動があることなど、会社としての今後の考えもあわせて伝えます。
② トラブルを防ぐ「退職条件(解決金・有給消化)」の設定

退職条件の設定
- 退職日や、有給休暇の消化方法を明確に設定します。
- 解決金など、通常の退職よりも有利な金銭給付を上乗せして提案することも有効な動機付けになります。
- 退職理由を「会社都合」にするか「自己都合」にするかについて、労働保険上のメリットなどを踏まえて検討します。
- 退職に関するやり取りや会社の情報を外部に漏らさないよう、口外禁止条項や競業避止義務を設けることもあります。
③ 録音対策も必須!合意を促す面談での伝達と交渉術

退職勧奨の伝達と応答待ち
- 面談は録音されていると想定し、常に穏やかな態度で話を進めます。
- 相手の弁解を聞きすぎず、退職条件や期限の提示など、伝えるべき要点をしっかりと伝えます。
- 人間は決断に迷うため「今決めてもらえるならこの条件」と限定し、必ず回答の期限を設定します。
④ 後日の言及を防ぐ「退職合意書」の作成と手続き

退職手続き
話し合いで合意に至った場合は、必ず書面を残します。
退職合意書
退職日、有給、金銭の支払い、退職理由、口外禁止や清算条項などを記載した合意書を2通作成し、会社と労働者で1通ずつ保管します。
まとめ:問題社員対応は一人で抱え込まず、弁護士への相談を
解雇は会社にとって多大なリスクを伴うため、常に「最終手段」と考えてください。日々の業務の中で記録を残しながら改善指導を行い、それでも難しい場合は、今回ご紹介した「退職勧奨」によって合意による解決を目指すのが最も安全な道のりです。
しかし、問題社員との対話や書類の作成は、経営者や管理職の方にとって非常に精神的負担が大きい作業です。
当事務所では、顧問業務の中で問題社員対応のスケジューリングやシナリオ作成、文章の添削などを日常的にサポートしております。
セミナーをご聴講いただいた方には、初回30分の無料相談を実施しております。リスクに不安を感じている方、退職勧奨の準備が十分か確認したい方は、ぜひご活用ください。
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