トピックス

Topics

  • 法律コラム

退職金は払わなくても違法じゃない?全社員支給の法的義務と「減額・不支給」で訴えられる4つの盲点

「退職する社員から退職金を請求されたけれど、法律上必ず払わなければいけないのだろうか…?」
「会社に損害を与えた社員や、急に同業他社へ転職する社員の退職金を減額・不支給にしたい…」

社員の退職時に、多くの経営者や人事担当者様が直面する「退職金」に関するお悩み。

実は、法律上、会社に退職金の支払いが義務付けられているわけではありません。しかし、自社の就業規則や退職金規程に記載がある場合『法的義務』へと変わります。

さらに「感情的な判断」や「会社の都合だけ」で不支給や減額を行ってしまうと、後から未払い退職金として裁判で高額請求され、敗訴するリスクがあります。仮に懲戒解雇レベルの違反があっても、全額不支給が認められるハードルは極めて高いのが実情です。

本記事では、企業法務のプロである弁護士が、退職金における『法的義務』の正しい境界線と、裁判・不当請求リスクを防ぐ『4つの実務チェックリスト』を分かりやすく解説します。

支払い義務は?退職金制度を詳しく知らない会社が困惑する「法的義務」

社員が退職する際「法律上、退職金は全員に必ず払わなければいけないのだろうか?」と悩まれる経営者様は意外と多い印象です。

結論から申し上げますと「法律上、退職金を支払う一律の義務」はありません。

退職金の前提

退職金の前提として知っておくべきポイントは以下の通りです。

法律上の支払義務ではない

労働基準法などで「すべての会社は退職金を支払わなければならない」と義務付けられているわけではありません。
退職金をゼロにして、代わりに手取り給与を高く設定する会社が近年が増えているように、どのような給与体系を設計するのかは、会社の経営判断に任されています。

制度があれば「支払い義務」が発生する

法律上の義務はありません。
しかし、自社の就業規則や退職金規程で「退職金を支払う」と定めている場合は、会社に明確な支払い義務(法的義務)が発生します。

就業規則等の定めが根拠となる

「どんな条件で、いくら支払うのか」は、会社が定めた就業規則や退職金規程がすべての根拠となります。
不公平、あるいは不合理な規定にならないように、社労士など専門家の力を借りて、きちんとしたルール作りを行う必要があります。

一方的な不支給には「合理性」が必要

「退職時の態度が悪かった」
「競業他社へ転職する」
「いま当社は財務が厳しいから」

こういった会社側の一方的な理由で、退職金を減額・不支給にすることは、原則として認められません。

つまり、退職金支給の法的義務は「自社に退職金制度(規程)があるかどうか」が最初の出発点となります。

安易な「不支給・減額」は未払い請求の的に!裁判で負けないための3つの判断基準

退職金をめぐるトラブルは、会社と退職する社員の双方が感情的になりやすく、大きな紛争に発展しやすい分野です。

退職金の不支給・減額ポイント

裁判や労働審判などの争いを避けるために、経営者が押さえておくべきポイントは3つあります。

① 支給対象の確認|勤続年数・パート適用・受給要件のチェック

「勤続年数何年以上から支給対象となるか」「パート・アルバイトにも適用されるか」など、自社の退職金規程に書かれている条件を細かく確認しましょう。
条件を満たしている場合、原則として支払いを拒むことはできません。

② 減額・不支給リスク|「懲戒解雇・同業転職」でも全額不支給が認められない法的理由

仮に懲戒解雇レベルの違反行為があった場合でも、判例上「これまでの長年の貢献をすべて抹消するほどの著しい背信行為」がない限り、退職金の全額不支給は認められにくいのが実情です。
安易な減額・不支給判断は非常にリスクが高いため注意が必要です。

③ 退職事由別の倍率設定|自己都合・会社都合・定年の計算式と運用

「自己都合退職」「会社都合退職」「定年退職」など、退職の事由によって支給倍率や計算方法が変わるよう規程化されているかどうかも重要です。

経営者様の一方的な判断で不支給にしようとすると、後から未払い退職金として請求され、遅延損害金も含めて大きな支払いを命じられる危険があります。

高額請求・泥沼紛争を防ぐ!経営者がすぐ見直すべき退職金管理「4つの鉄則」

退職金トラブルを未然に防ぎ、健全な労務管理を行うために、日頃から以下の4つのチェックリストを意識しておきましょう。

退職金の注意点

退職金管理の4つの注意点

  • 規程を確認する
    自社の就業規則や退職金規程の内容が、現在の実態とズレていないか確認しましょう。
  • 支給条件を明確にする
    対象者、勤続年数、計算式などの支給条件を誰が見ても分かるように明確化します。
  • 不支給は慎重にする
    「感情的な不支給」は絶対に避け、法的な根拠と合理性があるかを慎重に検討します。
  • 記録を残す
    退職合意書や支給計算の根拠、協議のプロセスなどの記録をしっかり保存しておきます。

まとめ:古い退職金規程の放置がリスクに!法的根拠のある退職金制度で自社を守る

退職金は、長年会社のために貢献してくれた社員への労いであると同時に、会社の財務にも直結する非常に重要なお金です。

トラブルを防ぐ一番の予防策は「誰に対しても客観的で明確な制度(ルール)を作っておくこと」に尽きます。

「うちの退職金規程、昔作ったままで大丈夫かな…」
「退職予定の社員と退職金の額でもめそうになっていて困っている」

そんな疑問や不安が少しでも浮かんだら、一人で悩まずにどうぞお気軽に当事務所までご相談ください。

難しい法律知識がなくても大丈夫です!貴社の状況を丁寧にお伺いし、円満な解決に向けたベストなアドバイスをご提案いたします。

無料ウェビナーのご案内

TMG法律事務所は、中小規模の企業で起こりやすい問題やその対処、回避方法を的確にお伝えするセミナーを開催しています。
まずは無料セミナーにご参加ください。中長期的に、経営者・管理職のあなたを力強く支える弁護士がここにいます。

【実務直結】弁護士による企業法務ウェビナー(無料・アーカイブあり)