2026年施行「改正下請法(取引適正化法)」の実務ポイントと企業の違反リスク
皆さん、こんにちは。大阪で弁護士登録をして20年目になる、TMG法律事務所の吉田浩司です。
突然ですが「下請法なんて、うちのような中小企業には関係ない」と思っていませんか? 実は今、中堅・中小企業同士の取引において、無自覚のうちに法に触れ「加害者」となってしまうケースが急増しています。
2026年施行の「改正下請法(取引適正化法)」により、規制の網はかつてないほど広がりました。今回は、中小企業を中心とした経営層や法務、購買・外注管理をご担当されている皆様に向けて、現場で必ず押さえておくべき実務の変更点や注意点を解説いたします。
「弁護士の説明は専門用語ばかりで難しい」
「敷居が高くて相談しづらい」
といったイメージを払拭し、今日からすぐに自社の点検に使える実践的な知識をわかりやすくお伝えします。
ぜひ最後までお付き合いください。
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【警告】下請法違反がもたらす致命的なペナルティと法律強化の背景
近年、原材料やエネルギー費の高騰、最低賃金の引き上げなどにより、モノやサービスを提供する側のコストは上がり続けています。
しかし、中小企業は競争にさらされており、なかなか価格転嫁(値上げ)ができないという苦しい実態があります。国は賃上げを推進するために、取引を適正化し「下請けいじめ」を厳しく取り締まる方針をとっています。
もし、この法律に違反してしまった場合、以下のような重いペナルティやリスクが待ち受けています。
違反した場合のリスク

- 行政から相手への不当な減額分などの支払い勧告が出され、金銭的な損失が発生します。
- 悪質な違反は行政のウェブサイト上で社名と違反事実が公表され、社会的な名誉が傷つきます。
- 公表されることで、取引先や金融機関からの信用が低下します。
- 「下請けいじめ」をした企業として評価され、新卒採用が難しくなるなどの悪影響が出ます。
中小企業は、大きな企業との取引では「被害者(受託側)」の立場で関わることが多いです。しかし、自社よりもさらに小さな零細企業に対しては「加害者(委託側)」にもなり得るのです。両方の視点を持つことが重要です。
プロが教える!2026年「取引適正化法」への名称変更と5つの重要ルール変更点
2026年からの法改正で、何がどう変わったのでしょうか。細かい条文よりも、実務に直結する大きな変更点をご紹介します。
用語の変更

- 法律の名称が「下請法」から「取引適正化法」へと変わりました。
- 親事業者を「委託事業者」、下請けを「中小受託事業者」と呼ぶなど、上下関係を連想させる用語が変更されました。
- 対象となる取引に「特定運送委託」が新たに追加されました。
- 資本金が小さくても、従業員が300名または100名を超える場合は規制対象となる「従業員基準」が新設されました。
- 手形による支払いが禁止されました。
- 「協議に応じない一方的な代金決定」が新たに禁止行為として追加されました。
- 書面の交付義務について、電子メールやメッセージアプリへの添付といったペーパーレス対応が可能になりました。
自社は対象?規制対象となる「5つの取引類型」と「従業員・資本金基準」
取引適正化法は、「特定の取引内容」と「一定の企業規模」の両方を満たして初めて規制の対象となります。
対象となる5つの取引類型
- 品質やデザインなどを指定して物品を作らせる「製造委託」が対象です。
- 壊れた機械や自動車などを直させる「修理委託」が対象です。
- 映像、デザイン、プログラムなどのコンテンツを作らせる「情報成果物作成委託」が対象です。
- 運送やデータ入力、マッサージなど、サービスを提供する「役務提供委託」が対象です。
- 荷主が顧客に商品を届けるために運送会社にお願いする「特定運送委託」が対象です。
特定運送委託の具体例

注意点
- 製品を仕入れて売るだけの「売買」は、特定運送委託の場面を除き、規制対象にはなりません。
- 役務提供委託のうち、自社のために使うサービス(自社ビルの清掃や社員向けセミナー講師など)は対象外となります。
企業規模の基準(委託の種類に応じて大小2つの基準あり)

企業規模基準
これらの取引に対し、自社が「資本金1,000万円超」または「従業員100名超(一部の取引は300名超)」であり、相手方が自社より規模の小さい事業者の場合に、委託側として規制を受けます。逆に言えば、資本金1,000万円以下かつ従業員100名以下の企業が仕事を依頼する側であれば、規制の対象にはなりません。
発注側必見!絶対に守るべき「4つの義務」と買い叩きなど「11の禁止行為」
対象となる取引と規模に該当した場合、仕事を依頼する側(委託事業者)には厳格なルールが課せられます。
4つの義務
- 誰が、何を、いつまでに、いくらで依頼したのか等、発注内容を明示した書面(データ可)を交付する義務があります。
- 発注内容に関する書類やデータを2年間作成・保存する義務があります。
- 物品やサービスを受け取ってから60日以内に代金を支払う義務があります。
- 支払いが60日を過ぎた場合、14.6%の高い遅延利息を支払う義務があります。
11の禁止行為の代表例

- 正当な理由のない受領拒否、返品、注文後の不当な減額は禁止です。
- 市場価格に合わない不当に安い金額での注文を押し付ける「買い叩き」は禁止です。
- 取引を続ける条件として、自社の商品やサービス、イベント品、季節の食品などを強制的に購入・利用させることは禁止です。
- 法律違反を行政に申告したことを理由に取引を停止するなどの報復措置は禁止です。
- 何度もデザインなどのやり直しをさせ、追加費用を払わないなど不当な給付内容の変更・やり直しは禁止です。
- コスト増を理由に値上げの協議を求められた際、必要な説明や情報提供をせずに一方的に代金を据え置く(または不当に低く決める)ことは禁止です。
【法務・購買担当者へ】法改正に向けて今すぐ実践すべき5つの点検ステップ
法律が変わった今、担当者の方は以下のステップで現状を点検してみてください。
中小企業担当者としてやるべきこと

4つの義務・11の禁止行為の規制を受けるかどうかのチェック
- まず自社の資本金と従業員数【企業規模】を確認し、規制対象になり得るかチェックしてください。
→資本金1000万円以下、従業員100名以下であれば中小受託事業者として規制を受けることはさしあたりありません。 - 【規制対象取引】を発注しているか確認してください。
多いのは各種部品、製品、食品のOEM(製造委託)、室内清掃・クリーニング(役務提供委託)、備品の修繕(修理委託)や小規模業者への配送委託(役務提供若しくは特定運送委託)などです。 - スポット取引よりも、継続的に取引している相手との関係を重点的に見直してください。
- 基本契約書が締結されているか、毎回の発注書に必要な項目(納期や金額など)が記載されているか確認してください。
- 支払いサイトが「受領から60日以内」に設定されているか確認し、違反している場合は契約を改定してください。
- 現場で買い叩きや一方的な価格決定が行われていないかヒアリングを実施し、問題があれば是正してください。
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内容が少し難しく感じたかもしれませんが、まずは「こういうことをすると違法になるんだな」という感覚を持っていただければ十分です。
この知識は、自社がうっかり加害者になるのを防ぐだけでなく、理不尽な要求をされた際に身を守る武器にもなります。
TMG法律事務所では、今回お話しした取引適正化法の適用範囲や契約書の書き方などについて、30分の無料相談の範囲内でアドバイスを行っております 。費用がかかる場合でも、できる限り合理的なご提案をいたしますので、安心してお声がけください。
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