固定残業代(みなし残業)は「働かせ放題」ではない。超過分の計算と違法リスク回避の運用法
「うちは固定残業代(みなし残業)を払っているから、いくら残業させても追加コストはかからない」
経営者や人事担当者の皆様、もし心のどこかでそう思っていたら……
今すぐその認識を改めてください。
その誤解が、将来的に数百万円規模の「未払い残業代請求」という爆弾に変わるリスクがあります。
こんにちは。TMG法律事務所の代表弁護士です。私は普段、「法律は自分を守るためのツール」として、もっと身近に感じてほしいと願って活動しています。しかし、この「固定残業代」に関しては、あまりに誤解が多く、知らず知らずのうちに法的な危険地帯を歩いている企業があとを絶ちません。
「知らなかった」では済まされない労務管理の世界。トラブルが起きてから慌てるのではなく、今のうちに「正しい固定残業代のルール」を確認しておきませんか?この記事では、弁護士の視点から、経営者が陥りやすい落とし穴と回避策をわかりやすく解説します。
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1. 「定額で残業させ放題」は誤解!固定残業代(みなし残業)の法的リスクとは
多くの企業で導入されている「固定残業代制度」。
手当として毎月決まった額を支払っているからといって、「これさえ払っておけば、何時間残業させてもOK」と誤解している経営者はいませんか?
「うちは固定残業代込みの給料だから」という言葉だけで運用していると、後々、未払い残業代として高額な請求を受けるリスクがあります。
経営者として知っておくべきは「固定残業代 = 残業代の『定額・無制限』プランではない」ということです。
2. 固定残業代の仕組み解説|あくまで「残業代の前払い」である理由
では、固定残業代とは本来どういう仕組みなのでしょうか?
一言で言えば、一定時間分の残業代を「前払い」している制度に過ぎません。
固定残業代の考え方

画像にある通り、この制度は魔法の「定額使い放題プラン」ではありません。
経営者として知っておくべき鉄則は以下の通りです。
経営者が陥りやすい誤解
- 誤: 3万円払っているから今月はどれだけ残業しても追加コストはゼロ。
- 正: 3万円分(例えば20時間分)の残業代を「先に渡している」だけ。
「固定」なのは「金額(と対応する時間)」であって、「労働時間」が無制限になるわけではないのです。ここを混同してしまうと、労務管理がズレてきてしまいます。
3. 超過分は支払い義務あり!追加コストが発生する2つのルール
「じゃあ、結局いくら払えばいいの?」という疑問が湧くと思います。
ここで重要なルールが2つあります。
追加で支払いが必要な理由

① 設定時間を超えたら「差額支払い義務」がある
例えば、「固定残業代(20時間分)」と設定している従業員が、月に25時間残業をしたとします。この場合、どう処理すべきでしょうか?
- 20時間分: 支払い済み(固定残業代として)
- 超過した5時間分: 別途計算して追加で支払う義務がある
この「超過分(5時間)」を支払っていない場合、それは「賃金未払い」となり、労働基準法違反となります。
② 「何時間分か」を契約書で明確にする
よくある失敗例が、契約書に「給与に固定残業代を含む」とだけ書いてあり「金額がいくらで、何時間分に相当するのか」が曖昧なケースです。
これでは、いざ裁判や労働審判になった際、「そもそも固定残業代として無効である(=全額未払い)」と判断され、過去に遡って莫大な残業代を支払うよう命じられるケースが多発しています。
「この手当(〇〇円)は、〇〇時間分の残業代である」
これを雇用契約書や就業規則で明確に区分・明示することが必須条件です。
4. 労務トラブルを防ぐ!就業規則・雇用契約書の必須チェックリスト3選
ここまで読んで「うちは大丈夫かな……」と不安になった経営者の方もいらっしゃるかもしれません。
まずは、自社の給与規定や雇用契約書をチェックしてみてください。
確認すべきポイントは以下の3つです。
給与規定の確認

固定残業代・セルフチェックリスト
- 時間数の明示
固定残業代が「何時間分の残業に相当するのか」記載されていますか? - 差額支払いの規定
「設定時間を超過した分は、別途追加で支給する」という文言が入っていますか?また、実際に支払われていますか? - 基本給との区分
「基本給30万円(残業代含む)」のようなドンブリ勘定になっていませんか?「基本給〇円、固定残業手当〇円」と明確に分かれていますか?
※「基本給30万円(残業代含む)」のような書き方は、区分が不明確として無効になるリスクが高いです。
最後に:残業代請求は「予防」が鍵。もめる前に弁護士へ相談を
給与や残業代のルールは複雑で、法改正も頻繁に行われます。
「知らなかった」では済まされないのが労働法ですが、多忙な経営者の方がすべてを完璧に把握するのは困難です。
もし、上記のチェックリストで一つでも「自信がない」項目があった場合は、トラブルが起きる前にぜひ一度ご相談ください。
弁護士への相談は「従業員ともめてから」ではなく「もめない体制を作るために」使っていただくのが一番賢い利用法です。皆さんの会社と大切な従業員を守るために、私たちが法務の側面から全力でサポートします。
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