社内不倫が泥沼裁判に?経営者を守る「対価型セクハラ」の境界線と対策【弁護士解説】
こんにちは、弁護士の吉田浩司です。
大阪で弁護士をして約20年。これまで多くの中小企業のご相談に乗ってきました。
「弁護士=怖そう、敷居が高い」と思っていませんか?
私はそんなイメージを払拭し、経営者の皆さんが「困ったときに気軽に相談できるパートナー」でありたいと考えています。
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さて、今回のテーマは「セクハラ」です。
前回は職場の空気を悪くする「環境型」をお話ししましたが、今回はより深刻な「対価型セクハラ」について深掘りします。
「うちはそんな昭和な会社じゃないよ」と思った社長、要注意です。
実は今、「社内恋愛のもつれ」がセクハラ事案として会社を揺るがすケースが増えているのです。
1. 賠償額の桁が違う?「対価型セクハラ」と「環境型」の決定的なリスク差
セクハラには大きく分けて2種類あります。
- 環境型: 下品な冗談やからかいで、職場環境を悪化させるもの。
- 対価型: 性的な関係を拒否した部下に、解雇や左遷などの不利益を与えるもの。
職場を不快にさせる環境型を「弱いセクハラ」とした場合、今回取り上げる「対価型」は、いわゆる「強いセクハラ」です。
昔のドラマのように「俺の女になれば昇進させてやる」といった露骨なものは減りました。現代で問題になるのは「合意の上だと思っていた社内恋愛・不倫関係が、破局後にセクハラとして訴えられる」ケースです。
賠償額の桁が変わります
環境型セクハラの賠償義務(慰謝料)が数十万円程度で収まることが多いのに対し、対価型(特に性交渉を伴うもの)の場合、300万円〜500万円、あるいはそれ以上の高額請求になることが珍しくありません。
さらに、被害届、告訴が警察に受理され、刑事事件(不同意性交等罪)に発展すれば、会社の社会的信用は地に落ちてしまいます。
2. 「合意の上」は通用しない?社内恋愛が泥沼の裁判トラブルに変わる瞬間
よくある事例を見てみましょう。
【ケース】上司A(男性)と部下B(女性)が一夜を共にした翌日
- 部下Bの主張: 「断ったのに無理やりホテルに連れ込まれた。翌日から上司の態度が冷たくなり、精神的苦痛を受けた」
- 上司Aの主張: 「相談に乗るうちに意気投合し、合意の上だった。翌日『忘れてください』とLINEが来て、気まずくて疎遠になっただけだ」
この「言った言わない」の争いに、会社は巻き込まれます。
特に上司と部下という「力関係(パワーバランス)」がある場合、女性側が「本当は嫌だったけれど、立場上断れなかった」と主張すると、裁判所はその背景を重く見る傾向にあります。
3. なぜ支店長はシロで社長はクロなのか?権力と同意の境界線
ここで、非常に興味深い裁判例(東京地裁:平成24年)をご紹介します。
ある女性社員が、社長と支店長の2人からそれぞれ性被害を受けたと訴えた事件です。
高裁が出した判決は、明暗が分かれました。
- 支店長: セクハラ認定されず(シロ)
- 理由:頻繁なデート、旅行、プレゼント交換など、親密な交際の実態(証拠)があったため、「合意があった」と判断されました。
- 社長: セクハラ認定(クロ・賠償命令)
- 理由:人事権を持つ社長が、一人暮らしの社宅を訪問して関係を持った。「社長の訪問を拒否するのは心理的に困難であり、応じたのはやむを得なかった(=合意ではない)」と判断されました。
経営者への教訓
たとえ「同意があった」と思っていても、社長や役員という圧倒的な地位がある場合、裁判所は「真の合意」とは認めにくいという厳しい現実があります。
そして恐ろしいことに、これらは社長個人の問題で終わらず、会社も「使用者責任」「環境配慮義務違反」として、連帯して数百万円の損害賠償を負うリスクがあるのです。
4. 会社を守る鉄則|「解雇」を急ぐ前に経営者が絶対やるべき初動対応
もし、社内でこのような訴えが起きたら、会社はどうすべきでしょうか?
① 即断しない(事実調査の徹底)
被害者の「クビにしてほしい」という感情と、加害者とされる側の「合意だった」という主張。
どちらか一方を鵜呑みにするのは危険です。
- LINEやメールの履歴
- 写真、動画
- 同僚の証言(慎重に!)
これらを客観的に精査する必要があります。安易に加害者を解雇すると、今度は、会社が加害者から「不当解雇」として裁判所に訴えられるリスクもあります。
② 予防こそ最大の防御
- 研修の実施: 管理職に対し、「部下との関係性」のリスクを教育する。
- 相談窓口の設置: 問題がこじれる前に発見する。
- 保険の検討: 万が一の高額賠償に備え、雇用慣行賠償責任保険(EPLI)などを検討する(※費用対コストの検討が必要です)。
さいごに:火種は小さいうちに
「男女の仲」は外部からは見えにくく、一度こじれると感情的な対立も相まって解決が非常に困難です。
特に、経営者や幹部が当事者になると、会社の存続に関わるダメージになりかねません。
「これってセクハラになる?」「社員から訴えがあったけどどう対応すればいい?」
少しでも不安を感じたら、自己判断せずに早めに専門家へご相談ください。
初期対応を間違えないことが、会社と社員を守る一番の近道です。
次にあなたがすべきこと
貴社の就業規則やハラスメント防止規定は、最新の判例やリスクに対応できていますか?
「まずはリスク診断だけしてみたい」という場合でも構いません。初回相談にて、現状のヒアリングから始めさせていただきます。お気軽にお問い合わせください。
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